多重債務【過払金請求】

過払金について

過払金とは、借金をした方が金融業者に返し過ぎた(払い過ぎた)お金のことをいいます。
たとえば消費者金融業者(サラ金業者)やクレジット会社などからお金を借りる際、利息制限法で定められた金利(例えば元本が10万円以上100万円未満で年18%)を超えた利息を支払う約束(例えば年29.2%)をして借りている場合があります。
この場合、これまで支払ってきた利息と利息制限法で定められた利息との差額は、本来であれば支払う必要がないお金です。仮に長期に渡って返済を続けていると、本来(利息制限法内の利息)であれば既に借金を返し終わっていることがあり、期間によっては業者に対して払い過ぎていることがあります。本来支払う必要のない利息を支払っていた場合に、貸金業者から返還してもらえるお金のことなのです。
もし、利息制限法に定められた金利を超える利息を5年以上返済し続けていたら、過払金が発生している可能性が高いと言われています。
利息制限法を超える金利で支払いを継続し、完済している場合には、必ず過払金が存在することになります。

利息制限法

利息制限法とは、お金を貸す際の利息の上限を定めた法律です。

元本が10万円未満の場合は、年20%
元本が10万円以上100万円未満の場合は、年18%
元本が100万円以上の場合は、年15%

この制限を超える利息の定めは無効です。
一般の債務者の方々は、利息制限法という法律を知らない方がほとんどで、業者は年27%~29%といった高い利率で貸していることが多かったのです。 制限を超過して支払った利息は、原則として元本の返済に充当することができます。
少し前の契約書や請求書に書いてあるキャッシングの利息を確認してみて下さい。年20%を超える利率が書いてあれば、これまであなたは苦労して違法な(本来支払わなくてもよい)利息を支払い、業者を法外に儲けさせてきたことになります。
なお、現在の請求書に書いてある利率は、数年前に業者が適法な利率に改訂していますので、現在の請求書に適法な金利が書いてあるからと言って、簡単にあきらめないことが重要です。
なるべく当初の契約書の利率を確認してみることをお勧めしますが、仮に当初の契約書が無くとも、おおよそいつ頃から借り入れをしていたかを思い出すことができれば、過払金の有無について、アドバイスを受けることが可能です。

いわゆるサラ金業者でなくとも、信販系で一般の方が利用していることが多い三菱UFJニコス、セディナ(旧オーエムシーカード、旧セントラルファイナンス)、クレディセゾン、JCBカード(ジェーシービー)、ジャックス、オリエントコーポレーション、アプラス、イオンクレジットなども取引開始時期、取引期間によっては過払いが生じる可能性があります。

過払い金の発生

なぜ、我が国で「過払金」が発生するようなことになってしまったのかについては、利息制限法と出資法という二つの法律の関係によります。
利息制限法は、上記のとおり、利息の上限を、元金の残高に応じ、年15%~20%と定めています。これを超える利息は無効です。
一方、出資法は、刑事罰の対象となる上限利率を定めています。出資法では、利息の上限を29・2%と定め、これを超えて利息を定めると刑事罰が科せられることになっています(現在は、年20%まで引き下げられています)。
つまり、利息制限法に定められた利息の上限を超えた利息を設定しても、出資法の上限を超えなければ刑事罰は科されなかったのです。

このように、利息制限法で定めた利率と、出資法の利率の差の部分が、民事上は無効であるにもかかわらず刑事罰が科されない金利として、一般的にグレーゾーン金利と呼ばれています。
これまで、貸金業者は、通常このグレーゾーンの範囲に金利を設定し、違法な利息をとってきました。つまり、「過払金」とは、このグレーゾーン金利の部分の支払いそのものということになります。 利息制限法で定められた利率を超えて支払った利息を元本に充当していくと、充当すべき元本がなくなってしまうことがあり、それでも知らずに支払いを続けている場合、過払金がどんどん膨らんでいくことになるのです。

法改正がなされた平成22年6月以降は、このグレーゾーン撤廃されましたが、このことは、それまでに支払った過払金には何の影響もなく、これまでどおり請求することが可能です。
法改正は、金融業者がその法律に従う限り新たな過払金が生じないということになっただけです。

過払いが発生する可能性のある会社

いわゆる消費者金融会社(アイフル、アコム、プロミス、武富士、レイク(新生フィナンシャル)、CFJ等)だけが、過払い金請求の対象になるわけではありません。

女性の方で意外と多いのが、信販会社です。カードを作る方も、デパートやスーパーなどで手軽に作ることができるので、上記のような「典型的」消費者金融会社から借りるのに比べ、心理的抵抗が小さいようです。 当初は、「食品の購入に便利」とか、「ポイントを集めるため」、といった理由でクレジットカードを作ったものの、キャッシング機能があることに気付き(キャッシングの勧誘もDMでたくさん来ますよね)、生活費の足しにという理由でキャッシングに手を出される方も多いようです。

最近はどこの会社も金利を18%以下に下げていますが、三菱UFJニコス、セディナ(旧オーエムシーカード、旧セントラルファイナンス)、クレディセゾン、JCBカード(ジェーシービー)、ジャックス、オリエントコーポレーション、アプラス、イオンクレジットなどからキャッシングをしていた場合、契約当初の利率はグレーゾーンに設定されていたかもしれません。
一時期でも利息制限法を超える利率で支払いをしていた場合、少なくとも現在の残高を減らすことができます。
過去の資料を一度じっくり確認してみてください。

資料が無く、自分では確認できない場合でも、弁護士に相談してみてください。過払金の有無について、おおよその借入時期さえわかれば、ある程度の見込みはわかりますし、資料がなくても調査することが可能です。

過払金の請求

法改正がなされ、グレーゾーンが撤廃されましたので、大手の業者は、金利を利息制限法内に下げました。従って、最近の明細書を見ても適法金利が記載されています。
しかし、これまで業者が取得してきた違法利息まで遡って有効になることはありません。
法改正後は、その法律に従う限り、新たな過払金が生じないというだけで、既に過払金が発生している場合には、その過払金が無くなることはありませんので請求が可能です。

業者が、自分から利息を下げてくるとか、支払方法に相談に乗りますよ、といった親切な態度を示してくる場合、既にその債務者の方は、過払いになっていることも多いようです。
過払金が発生しているかどうかは、業者から取引の履歴を取り寄せ、利息制限法の制限利率に引き直して計算してみなければわかりませんので、まずは一度、専門家に相談してみることをお勧めします。

取引履歴

取引履歴とは、業者が、いついくら貸して、いついくら返済があったのかを時系列に沿って記録したものです。細かい字で書かれており、理解しにくいものも時々あります。取引期間が長い方は10頁以上になることもあります。

債務者の方は、自分がいついくら借り、いついくら返済したかについて、長い取引期間の全てを記録・記憶していることは普通無いと思われます。従って、引き直し計算をするためには、貸金業者等からこの取引履歴の開示を受けることが前提となります。

業者側が取引履歴を開示する義務があるか否かについては、裁判上争いがあったのですが、最高裁平成17年7月19日判決により、業者が「保存している取引履歴すべて」の開示義務を負っていることを認められました(開示を拒否したことが不法行為として損害賠償請求の対象になることが認められました)。
従って、大手消費者金融業者をはじめクレジット会社全般も開示を拒否することは、最近はありません。
下記のようなご質問を多くいただいたので、回答を記載いたします。

Q. サラ金業者と5年ほど取引をしていますが、過払金の請求は可能ですか?
契約時の金利次第では、可能性は十分にあります。 過払金の有無、額の大きさは、取引の期間のほか、金利や極度額(借入れすることができる枠)、借入残高の推移、返済した金額などにより決まります。
例えば5年程度の取引で過払金が発生する人もいれば、10年近い取引があっても過払金が発生しない人もいます。
元々利息制限法内の金利で借入れをしていた場合には、過払金はありません。 極度額いっぱいまで借りて長期に取引を継続し最後に一括弁済をした方や、返済ばかりを継続して行っている方は、過払金がある可能性が高くなります。

Q. 完済した業者の契約書やカードがありません。過払金請求できますか?
契約書やカードなどの資料がなくても過払金の請求は可能です。
法律相談の段階である程度の見通しを得ることができますので、資料はあるに越したことはありませんが、契約書やカードがないと、過払金請求ができないというわけではありませんので、ご安心ください。 但し、どこから借りていたのか分からないということでは、過払金の請求はできません。よく思い出してから法律相談を受けるようにしましょう。

Q. 過払金請求をすると、業者に嫌がらせをされませんか?
相当悪質なヤミ金業者で無い限り、通常のサラ金業者であれば、過払金を請求しても嫌がらせを受けることはありません。

請求の期限

過払金返還請求権(難しい言葉で言うと、不当利得返還請求権)は10年で消滅時効にかかります。
最終取引日(通常、完済した日)から10年です。初めて借りた日から10年ではありませんのでご注意ください。
過払金に対する契約年数分の利息(過払利息)を受け取ることができる可能もあります。

クレジット会社のキャッシング

クレジット会社のキャッシングも、利用時の金利によっては過払金が発生します。
一般に、消費者金融(サラ金)よりクレジット会社の方が身近でクリーンなイメージを持っている方が多いですが、クレジット会社のキャッシング金利は、サラ金業者の金利と同程度であることがほとんどです。クレジット会社でも、年25%~29%で貸付を行っていました。
もっとも、信販会社はショッピングの立替や利息制限法以内のキャッシングを商品としている場合もあります。
ショッピングの立替や利息制限法内のキャッシングは過払金が生じませんから、信販会社のカードで取引していたからといって必ず過払金が発生するわけではありません。 利用時の金利がわからない場合、まずは取引履歴を取寄せて確認することをお勧めします。

自分で請求を起こす場合

過払い金は自分でも請求できます。但し、多少勉強し、業者及び裁判所と自分でわたり合う覚悟が必要です。

1 取引履歴を取り寄せる。
まずは、「取引履歴開示請求書」を作り、直接郵送します。業者によっては、電話で対応しているところもあるようです。

2 送られてきた取引履歴を解読し、引き直し計算をする。
取引履歴が届いたら、利息制限法による引き直し計算をします。引き直し計算ソフトはインターネット上などで入手できます。書籍の付録に付いているものでも結構です。
「解読し」と書いたのは、業者によっては、一般の方には読み方が難しい不親切なものを送ってくる場合があるからです。

3 過払金請求書を出す
引き直し計算の結果、過払金があることがわかった場合、業者に対し、請求書を送付します。
請求書には「貴社から開示された取引履歴に基づき法定利息で引き直し計算したところ過払金○○万円が発生していることが判明しました。つきましては、1週間以内に下記口座に振込んでください」などと記載します。計算書も添付します。

4 業者と交渉する(裁判を起こす)
請求書を出すと、業者のほうから連絡してくる場合もありますが、一般の方が請求する場合、放置される場合もあります。
連絡が無い場合、当方から業者に連絡します(連絡する際は氏名・生年月日・会員番号等を確認されますので準備をしておきましょう)。
通常、担当者は、「会社の状況が厳しいので○万円にしてもらえないか」「予算が無いので支払いは半年以上先の来年になります」「払いません。」などと言ってきます。
始めから「過払金全額を利息を付けて返還する。」と言ってくる業者はありません。 だいたい過払元金の5割程度でならば、ご自身で和解をすることも可能な場合が多いようです。
納得がいかなければ裁判をします。 裁判の起こし方は、法律の決まりに則ってしなければならず(勉強が必要)、期日は平日の昼間に行われますので、負担は大きくなります。

  ※弁護士に依頼する場合、この2~4を速やかに行います(速やかに行ってくれない弁護士は避けた方が賢明です)。また通常、5割で解決することはありません(当事務所では10割を原則として交渉します)

5 和解書を取り交わす
業者と交渉の結果、合意が成立すれば和解書を取り交わします。
和解書を作るのは難しいと思いますから、業者に作って送ってもらうのも一つの手段です。

6 過払金が返還される
和解した後は、約束通り、自分の口座に入金されることを確認します。

自分で請求するよりも費用を払って弁護士依頼したほうが、自分の時間を取られず、イヤな思いをすることもなく、スピーディーに、かつ結局多額のお金が自分の手元に残る結果となることもあります。 裁判所の法廷で過払いの本人訴訟を見ていると、請求者なのに裁判官や相手方から責められ、気の毒に思える場面に時折出くわします。
自分ですべてやると決めるにあたっては、よくよく検討するようにして下さい。

被相続人の過払金

被相続人(亡くなった方)が多額の借金を残して死亡し、相続人がその借金を知って驚くことがあります。相続人は通常このような場合、相続放棄をするかどうか、という視点から考えることが通常です。 しかし、借金の内容をよく確認せずに相続放棄をしてしまうことは危険です。被相続人の借金が、実は、利息制限法に基づいて引き直し計算をして見ると過払いの状態になっており、過払金を取り戻すことができる場合があるからです。
被相続人の持ち物を整理していて、サラ金から多額の借り入れをしていたということが分かった場合、すぐに相続放棄をせずに、弁護士に相談するようにしましょう。
相続放棄をするか否かは、相続の開始から原則として3か月以内に決めなければなりませんので、グズグズしている暇はありません。
なお、相続人が過払金の請求をする場合、誰が過払い金を承継したのかを確定する必要があります。通常は相続人間で遺産分割協議をすることにより確定します。たとえば、母親が過払金を残して死亡した場合、過払金については、相続人(長男・次男)のうち、長男が相続する、という遺産分割協議をすることにより、長男が業者に対して過払金請求をすることが可能となります。
当事務所でも、被相続人がサラ金やクレジットカード会社から多額の借金をしていたとして相続放棄のご相談を受けたケースで、結局すべての業者に過払金が生じていたケースが何件もあります。