1 はじめに
近時、会社を設立する際には、株券を発行しない会社が増えております。
しかし、平成16年の法改正までは、株券の発行が義務付けられており、会社法128条第1項では、「株券発行会社の株式の譲渡は、当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じない。」とされております。
そのため、前株主と新株主との間で株式譲渡をしても、株券の交付が無ければ、会社に対しては「効力を生じない」、要するに株主としての権利を行使できないことになります。
2 株券発行会社が株券を不発行とするためには、以下のような手続を経る必要があります。
(1)株主総会において、株券を発行する旨の定めを廃止する定款変更を決議
※ この決議は特別決議で、総株主の過半数の出席かつ出席株主の3分の2以上の賛成が必要です。
(2)効力発生日の2週間前までに公告し、かつ株主等に各別に通知
(3)株券を発行する旨の定め廃止の登記申請を、効力発生日から2週間以内に法務局へ登記申請
3 M&Aをする際、株券発行会社では、相続による株主移転や株式譲渡は行われていても、その際に株券の交付までは行われておらず、現在の株主の正当性に疑義が生じる可能性があります。そのため、株券不発行の手続をとっておくのも一つの選択肢です。