お知らせ

2023.06.08

任期途中での取締役解任(有限会社の場合)

1 はじめに

先日、株式会社の取締役解任と損害賠償の裁判例を紹介しました。株式会社の取締役は、任期の定めがあり、解任された取締役は、解任に正当な事由がない限り、残任期分の役員報酬相当額を損害賠償として請求できます。

では、役員に任期の定めのない、特例有限会社の場合はいかがでしょうか。

2 東京地判平成28年6月29日判例時報2325号124頁の判旨

有限会社法においては取締役の任期は定められておらず、定款上もこれを設けないことが許されていたところ、同法32条が準用する、同号による改正前の商法257条1項ただし書は・・・取締役の任期の定めがある場合にのみ、解任された取締役は解任により生じた損害の賠償を請求し得るとしており、任期の定めがない場合には、取締役は、正当な理由なく解任されたとしても、同項ただし書に基づく損害賠償を請求することはできなかった。同項を受け継いだ会社法339条2項には「任期ノ定アル場合ニ於テ」に相当する文言はないが、会社法の下では、取締役の任期は法律又は定款によって定められており、任期の定めが全くない場合は想定できないことから同文言は不要とされたものと考えられる。そして、会社法の施行により、同項の損害賠償責任の本質に変化が生じたという事情はないし、解任された取締役を有限会社法の下におけるよりも手厚く保護する実質的な理由は見当たらない。そうすると、特例有限会社における任期の定めのない取締役が解任されたとしても、当該取締役は、解任の正当な理由の有無にかかわらず、少なくとも会社法339条2項に基づく損害賠償請求をすることはできないと解するのが相当である。

 

3 結語

現在は有限会社を設立することはできませんが、平成16年以前に有限会社であった会社は、引き続き有限会社を名乗ることができ、これを特例有限会社と称します。

有限会社は株式会社の例外規定が多く定められており、都度確認が必要となります。

本件は、有限会社では役員の任期を定めないことができるため、「残任期」を観念できず、結果として、仮に会社に賠償義務が認められてしまうと、どの程度の期間分の賠償義務が発生するのかも難しい問題となってきます。

取締役が従業員ほどには地位を保証されていないことを踏まえても、適切な判断であろうと思います。