お知らせ

2023.07.07

「シフトによる」との勤務条件と勤務日数の削減


1 はじめに

パート従業員に対し、会社の業績不振による仕事量の減少、あるいは従業員の勤務態度不良等により、シフトを減らしたいと考えることがあります。

雇用契約書に週3日勤務と記載されていれば、週3日はシフトに入れなければならず、それより少ない日数しかシフトに入れなくても、週3日勤務で計算した給与を支払わなければなりません。

では、「シフトによる」などという曖昧な記載しかなされてない場合はどのように考えればよいのでしょうか。

2 シルバーハート事件(東京地判令和2年11月25日ジュリスト1574号131頁)

 

「雇用契約書(甲1)には,始業・終業時刻及び休憩時間欄に,始業時刻午前8時00分,終業時刻午後6時30分,休憩時間60分の内8時間のほか,手書きの「シフトによる。」という記載があるのみであり,週3日であることを窺わせる記載はないこと・・・,1か月の出勤回数は9回~16回であり,労働者の会社における勤務開始当初の2年間においても,必ずしも週3日のシフトが組まれていたとは認められないことからすると,固定された日数のシフトが組まれていたわけではなかったといえる。」として、週3日のシフトの合意を認めませんでした。

労働者は、「『シフトによる』という文言さえ雇用契約に記載すれば,繁閑等に応じて,自由にその裁量で勤務させることが可能になりかねず,賃金を唯一の収入とする労働者の利益を害することが著しいことから,シフトによる旨の合意をすることは考えられない」と反論しましたが、裁判所は、シフト制は「労働者の都合が反映される点で労働者にとっても都合のよい面もある」のであって,シフトによるという合意自体があり得ないものとはいえず」と判断しました。

他方で、「シフト制で勤務する労働者にとって,シフトの大幅な削減は収入の減少に直結するものであり,労働者の不利益が著しいことからすれば,合理的な理由なくシフトを大幅に削減した場合には,シフトの決定権限の濫用に当たり違法となり得ると解され,不合理に削減されたといえる勤務時間に対応する賃金について,民法536条2項に基づき,賃金を請求し得ると解される。」と判断し、本件では、「合理的な理由」が無いことが認定され、シフト削減分の給与支払が認められました。